ビットコインが12万5689ドルを突破し、15万ドルも視野に──そんなニュースを見ると、「時代の歯車がまたひとつ大きく回った」と感じます。オプション市場では6割がコール、つまり多くの人が“上がる未来”を信じている。けれど、私はこの熱狂を見ながら、少し違う風景を思い出しました。20世紀を支えた“もうひとつの革命の現場”、ベル研究所です。ベル研究所は、トランジスタ、レーザー、携帯電話の概念など、世界を変える発明を次々に生み出しました。その背景にあったのは、潤沢な資金と、研究者の知的好奇心を尊重する自由な文化。ところが、親会社AT&Tの解体でその支えが失われると、創造性は徐々に衰えていった。つまり、“支える仕組み”を失えば、どんな革新も長くは続かないということです。これは、ビットコインをはじめとする新しい潮流にも通じる教訓でしょう。私が若手だった頃、社内の制度改革プロジェクトに参加したことがあります。新しい仕組みを導入すれば会社は変わると信じていました。けれど、導入後、現場の理解が追いつかず、結局形骸化。私は焦りと無力感を覚えました。数値では成功に見えても、文化が追いついていなければ意味がない。その経験から、“制度より文化を変える”という視点を学びました。だからこそ、ビットコインの高騰を見て思うのです。価格の上下よりも、その背後にある「新しい信頼の文化」が根づくかどうかが、本当の勝負なのだと。歴史はいつも、“持続する仕組み”を作った者が次の時代を築いてきました。今日の一歩として、私たちも新しい挑戦を始めるとき、「これを支える文化は何か?」と一度だけ立ち止まってみませんか。その問いこそが、未来の継続性を生む第一歩になると信じています。