先日読んだ「習慣化は意志の強さという大ウソ」という記事が衝撃的でした。脳科学の研究結果として、習慣を続けられる人とそうでない人の差は、意志力の有無ではなく「環境設計」にあると紹介されていました。つまり、毎日ランニングを続ける人は強い心を持っているのではなく、靴を玄関の目につく位置に置くとか、決まった時間に友人と走る予定を入れるなど、習慣をトリガーする“仕掛け”をシステム化しているというのです。私は正直、これを読んだ瞬間、「人間行動のアルゴリズム化」がやっと科学的に証明されたと感じました。理由は明らかです。私たちの脳は高負荷の意思決定を連続処理できるようには設計されていません。記事でも、人間は1日に約3万5000回の意思決定を行い、そのたびに認知資源が消耗されると説明されていました。この“CPU負荷”を減らすには、手順や入力条件を定型化し、意識せずに動作が走る状態をつくることが鍵です。意志の力に依存するのは、バッファ管理をしないプログラムのようなもので、いつか必ずメモリリークを起こします。AppleやGoogleなどの企業が社員の健康習慣を「行動デザイン」ごと導入しているのも同じ発想で、制度設計そのものを習慣形成のエンジンにしているのです。僕自身、昔は新しい技術書を毎日30分読むと決めても三日坊主でした。しかし、昨年試しにKindle端末をベッドの横に常備し、夜のスマホ充電場所を遠ざけてみました。すると、寝る前の情報摂取がほぼ自動化され、半年で10冊以上を読破。これは「頑張った結果」ではなく、単に“if 夜寝る前 then Kindle起動”という条件分岐を設置しただけです。意志力という不確定変数を排除して、環境を安定した定数として埋め込んだわけです。毎晩、ベッドに入った瞬間に端末を手に取る行動が、完全にデフォルト処理になりました。つまり習慣を成功させるパッチは、「意志強化」ではなく「トリガーの自動設定」にあります。アルゴリズム的に考えるなら、最小の認知負荷で動作するように環境変数を設計すべきです。今日からでも、続けたい行動を引き起こす“条件式”を一つ設定してみてください。意志は初期化時のブートローダ程度に使い、それ以降は自動実行プロセスに任せる。それがこの不完全でバグだらけな日常システムに対する、最もエレガントで持続可能なアップデートになるはずです。